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トコタンのひとり言(open)

No.899 この子を残して.....永井隆博士   ( tokotan. )

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長崎の平和公園近くに、如己堂という、永井先生が闘病、執筆された場所があります。
自由散策のあと、ガイドさんから聞いた話です。

この永井博士の生き様がすごい気がしました。
話を聞いただけで、涙がぽろぽろ出ました。
少し紹介しますね。

松山に生まれ、長崎大学の医学部に入学。
中耳炎を患い、聴診器での診療が困難だと判断され、まだ研究途上で
あった、放射線医学を専攻。
その後、奥様、みどりさんと結婚、カトリックの洗礼をうけます。

でも、当時の技術はまだまだ未熟だったのですよね。
浴び続けたラジウムの放射線に博士の五体は白血病に犯されていて、白血病判明
余命3年と診断されてしまうのです。

それをある日、みどりさんに告白。
でもしっかりもののみどりさんは、きちんと冷静に受け止めるのです。
そこで先生は、二人の子供も、自分がいなくなってからも、みどりならきちんと
育てられるであろうと判断するのです。

でも、8月9日、大学に出勤した先生は、忘れ物をし、おうちに帰ります。
台所では、みどりさんが一人で泣いています。
先生は、胸がつまり、そのまま大学に帰るのです。

その日、長崎の街に原爆が投下されるのです。
先生も被爆しみどりさんは、軽い骨となり、いつも身に付けていたロザリオが
その場に残されているだけでした。
唯一の救いは、子供たちが疎開していたということでしょうか。
あとを託そうと思っていた妻の死の悲しみは想像を絶しますね。

それでも、医師として、自分が被爆しているのにもかかわらず、被爆患者の
手当てをする.....お医者様の鏡のような方ですね。

そのあと、ご自身もひどい原子病の症状が現われ、闘病生活が如己堂で
始まるのです。
二畳ばかりのところで、三人の生活。
その中で原爆症の研究、執筆。

ガイドさんのお話の中で特に、心に残った三点くらい書いて見ますね。

子供たちとの自分のベットの境に本をいっぱい積んでいるのですが、これは
子供たちを近づけないため.....
それでも、娘のカヤノちゃんは、それを乗り越えて先生の寝ている顔にほほずり
するのですよね。その時、抱きしめてあげたくても我慢をするのです。
なぜって、抱きしめてしまえば、自分の腫れた脾臓が張り裂けてしまうから。
そうすれば、子供たちをもっと悲しませる結果になるから。

もうひとつは、カヤノちゃんが入学式を迎える日.....
お兄ちゃんと登校するのです。
先生は、もちろん、窓から、寝ながら、お見送りです。
でも、カヤノちゃんは、足を止めてしまうのですよね。
なぜか.....
周りはみんなお母さんと楽しそうに登校するからです。
でも.....ここで甘やかしてはいけないと、大声で叫ぶのです。
「こらぁ。何ぐずぐずしておる。早く行かんか!」と。
この時の気持ち.....言葉に表せませんね。

また、ある日、カヤノちゃんの帰りが遅い。
いつもより、30分くらい遅いのです。
すると.....
ゆっくり、ゆっくり、一歩づつ、歩いてくるカヤノちゃんが見えるのです。
しかろうとすると.....カヤノちゃんが.....
「あのね、お父さん、学校でね、パインジュースもらったの。とっても
美味しかったから、お父さんに持って帰ってきたの、飲んで.....」と。
わずかな距離を、一生懸命こぼさないように、一歩づつ持ってきたのですよね。
胸が詰まってきますよね。

最後に、先生の書かれた、「この子を残して」の著書の一番素敵な部分書きますね。

うとうとしていたら、いつの間にあそびから帰ってきたのか、カヤノが冷たい
ほほを私のほほにくっつけて、しばらくしてから、
「ああ、…………お父さんのにおい……、」 と言った。
この子を残して………この世をやがて去らなければならぬのか!
母のにおいを忘れたゆえ、せめて父のにおいなりとも、と恋しがり、私の眠りを
見定めてこっそり近寄るおさな心のいじらしさ。戦の火に母を奪われ、父の命は
ようやく取り止めたものの、それさえ間もなく失わねばならぬ運命をこの子は
知っているのであろうか?
 枯木すら倒るるまでは、その幹のうつろに小鳥をやどらせ、雨風をしのがせると
いう。重くなりゆく病の床に全くの廃人となり果てて寝たきりのわたしであっても、
まだ息だけでも通っておれば、この幼子にとっては、依るべき大木のかげと
頼まれているのであろう。

けれども、私の身体がとうとうこの世から消えた日、この子は墓から帰ってきて、
この部屋のどこに座り、誰に向かって、何を訴えるであろうか?

 私の布団を押し入れから引きずり出し、まだ残っている父のにおいの中に顔を
うずめ、まだ生え替わらぬ奥歯をかみしめ、泣きじゃくりながら、いつしか父と
母と共に遊ぶ夢の我が家に帰りゆくであろうか?
夕日のかっと射しこんで、ただっ広くなったその日のこの部屋のひっそりとした
有様が目に見えるようだ。
私のおらなくなった日を思えば、なかなか死にきれないという気にもなる。
 せめて、この子がモンペつりのボタンをひとりではめることのできるように
なるまで……なりとも……。

少し暗いテーマかも知れないけど.....
今、元気で生きている、そんな幸せを少しかみ締めたくて.....
書きました。
今では、簡単に使っているレントゲンも、こんな素敵な人たちのおかげで
進歩してきたのですよね。


http://www1.city.nagasaki.nagasaki.jp/na-bomb/nagai/nagai001.html
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投稿日時:2003/02/23 11:32:16
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